HOME | うつ病夫の闘妻記 | 先に満足させる作戦

先に満足させる作戦

うつ病夫の闘妻記

うつ病の“理解”を得るために、自分自身が疲れてしまっては本末転倒。巻き込まれる妻もかわいそう。『妻は理解者』 という過剰な期待を上手にあきらめる方法、教えます。


第一回戦:先に満足させる作戦

~妻がうつ病を理解してくれない~
 
うつ病の私にとって、
唯一の趣味とも言える時間。

それは音楽鑑賞の時間。

しかし、
その時間が必要だということを
どうしても妻が理解してくれない。

どうにかしようと考えていた時。

ふと、ある考えが浮かんだ。

私の立場で考えても、
きっと何も解決しないし伝わらない。

永久に理解してもらえない。

ここは一つ、
徹底的に妻の目線になって考えてみよう。

夫が、毎日仕事から帰ってくる。
 
専業主婦の妻は、
「やっと遊んでもらえる!」
と喜ぶ。
 
※妻は私と遊ぶのを生きがいにしている
 
しかし、最近の夫は
ぐったり寝込む日も多い。
 
寝ていたと思ったら、
ツラそうな顔をしてムクリと起き上がる。

せっかく起き上がったと思ったら部屋に行く。

なんだ、音楽を聴きにいくのか。
つまらん・・・。

なるほど、この時点で
すでに妻は退屈しているのだ。
(小学生か…)

「その上、一人で音楽聴くんかい!!」

という不満が、
今までの暴挙に出ているのだろう。

そこで私は、
音楽を聴きたいと思ったら、
まず妻に話かけることにした。

今日あったことを聴いたり、
オヤツの取り合いをしたり、
ゲームにつきあったりした。
(小学生か…)

死力を尽くして頑張った。

そして思う存分遊んであげてから、
部屋に行くようにした。

すると・・・。

妻が部屋にこないではないか!
 
しかも、試しに
部屋から呼んでみると…、

面倒くさそうに返事をして
私を放ったらかしにするではないか!
 
この時、私は悟った。

うつ病の人間が、
他者に理解を求めるのに必要なのは
『説得』ではない。

いかに自分がツラいのかという
『アピール』でもない。

もっとも大切なのは、
『相手の視点で考えること』なのだ。

そのことに気づいてから。

私は、妻に理解を求めることを
段々とあきらめるようになっていった。

いきなりは無理かもしれない。

でも、少しずつでも
あきらめられるようにしていかなければ、
うつ病を治すことはできないと思った。

ただ初めは、
妻という『家族』に理解を求めることを
あきらめるというのはさみしいものだと感じた。

涙が出た。

家族だからこそ、夫婦だからこそ
理解してくれるのではないか、と。

でも、もし本気でそう思うのだったら。

まずは、自分の方こそ、
家族である妻を理解してあげればいいのではないか。

そう考えたら、
気持ちがだいぶ楽になった。

無理に理解してもらおうとするよりも、
理解してあげる方が、なんだか楽に思えたから。
 
 
<真壁純貴 著>