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無保険になる-わがままの限界

自由への挑戦 ‐ とことん正直に生きてみた

<著者:ちー>


5.無保険になる-わがままの限界

 

┃周囲の協力

 
前職をやめて、夫の保険から抜けるときに摩擦はあった
 
話し合いを持てない夫を説得することは難しい
 
途中どうにもならなくなり、たまたまあった身内の集まる席でみんなの意見を引き出した
 
ほぼ全員が私を支持してくれたことで、夫は私の意志を認めた
 
周囲をまきこんで、協力があっての転職だった
 
私は弱いから人に助けてもらったと思っていた
 
しかし、子供は今回の行動を見て、私を強いと思うと言った
 
弱さを見せて人を頼ることは強いことなのか
 
私の考えと裏腹に、周囲の捉え方に逆転現象が起きていた
 
 

┃退職

 
覚悟が足りないといわれようが、根性なしと呼ばれようが、すべて受け入れよう
 
他人には、今の私の家庭の状況も、今の職場の状況も、本当に理解することはできないんだから
 
ここで自分を押さえつけて、取り戻しかけている自分を失くしてしまっては元の木阿弥だ
 
そう自分に言い聞かせて退職した
 
退職後も問題が山積みなのは覚悟の上だった
 
 
夫が働くことに賛成していなかったので、次の職場を決めてから夫に報告したかった
 
働けなくなったら収入と自立の道がなくなってしまう
 
だから、辞めたことに気づかれないように、通勤を装いながら面接を受け続けていた
 
社会保険が切れたら、夫とは別に国民保険を自分で払えばいいと思っていた
 
しかし役所で断られる
 
世帯がおなじ場合は、世帯主の保険に入らなければいけないらしい
 
 
退職してから社会保険が切れるまでのリミットは2週間
 
それまでに社会保険付きの職を探さなければならなかった
 
しかし、思うように決まらない
 
自分のわがままも、ここが限界か
 
 
2週間の期限が迫り、女性向けの虐待の相談に乗ってくれるような機関に、電話で相談してみた
 
今病気がないのであれば、無理に国民保険に入らなくても大丈夫らしい
 
社会保険が切れても、後に決まった保険で保険料を納めたうえで、払い戻しできるそうだ
 
だから、次の職場が決まるまで入らない人もいるという
 
ただ、治療費は実費なので大きなケガや事故の場合は大金が必要だそうだ
 
 
私の他にも、同じような窮地に追い込まれる人がいるんだ
 
そう思ったら少しだけ気持ちが楽になった
 
自分にひと月だけ猶予を与えることにした
 
けれど、そのころには自分が探している求人が何なのか、よく分からなくなっていた
 
 
1か月間、無保険で職を探したがタイムアウト
 
無保険状態を延長することはいくらでもできたが、やはり保険のない不安定さに耐えられなかった
 
また、期限をもうけることのバカバカしさにも、うんざりしていた
 
わたしは観念して、夫の保険に戻ることにした
 
悔しかったが、戻れる保険があることはありがたいことだった
 
 

┃仕事を辞めた原因

 
仕事を辞めたことは自分を守ったと思えたし、潔い決断だったと思っていた
 
しかし、仕事が続けられなかった原因は私自身にもある
 
人間関係に疲弊しやすいことは、昔から私の弱点だった
 
同じ辛い環境を支えあった、同時に入社した同僚の愚痴も、うまく処理できなかった
 
愚痴を言うことは悪くはない
 
私は人に共感すると本人になり切ってしまって、全く同じ傷を負ってしまうようなところがあった
 
また、心無い発言をする人のセリフが、何度も頭をグルグルまわり切り、捨てることができなかった
 
他者との心の境界線がうまく引けないことは自覚していた
 
自分を縁どっている輪郭が点線で描かれているような気がしていた
 
夫との境界線が引けないことと問題の根っこは同じだと思った
 
私は共感のスイッチをOFFにするつもりでいないと、相手の感情にのみこまれてしまう
 
所詮は他人事
 
そのように強固に思わなければ、他者と適切な距離をたもてないのだと思った
 
次の職場では、今よりハッキリとした境界線を引いて、他者の侵入をしっかりと防ごう
 
 
そう思ってはみたものの、しばらくは仕事探しを休むことになった
 
表向きは子宮筋腫を辞める理由としてあげていたので、しばらくは療養期間のフリが必要だった
 
まさかこの療養生活中に、自分の価値観が逆転することになるとは、思いもしていなかった
 
<著者:ちー>