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ギランバレー症候群になる

自由への挑戦 ‐ とことん正直に生きてみた

<著者:ちー>


1.ギランバレー症候群になる

 

┃ギランバレー症候群の始まり

 
ギランバレー症候群は自分の免疫が正常な自分の体を間違えて攻撃する脳神経の疾患
 
50万人に一人の割合で発症するめずらしい国定指定難病
 
主な症状としては体が動かなくなる
 
 
最初に自分の体がおかしいと気づいたのはトイレの便器に座った時だった
 
冷たく感じるはずなのに右のモモのうらが暖かい
 
さらに風呂上りにはパンツがはけなかった
 
片足でバランスをとって立つことができない
 
また冬でもないのに体中にカイロをいくつも貼らなければないほど寒かった
 
 
「座骨神経痛かな ビタミン剤出せるけどどうする?」
 
昨日行った整形外科でそう聞かれたが薬はもらっていなかった
 
布団にくるまりながら電話をした
 
昨日診察してもらったが具合が悪くてそちらに行けない、子供に使いをやるので薬を渡してはもらえないかと言ってみた
 
返事は
 
「救急車をよんでください」だった
 
 

┃ギランバレー症候群 病状の進行

 
入院しても症状は悪くなるばかりだった
 
体中を自転車チューブでグルグルに巻き付けられているような痛みと苦しさ
 
ゴリマッチョな男たちがチューブの両端を握り、全力で綱引きをしているのが見えた
 
 
免疫力よ、君たちは素晴らしい
 
今までこんなにすごい力で私の体を守っていたのか
 
こんなに締め上げればどんな敵も間違いなく殺せるだろう
 
 
手に力が入らなくなりスプーンを口に運べない
 
飲み込む喉の力は弱くなり、声も出しにくくなっていた
 
そしてとうとう食べられなくなった
 
オレンジ色の栄養点滴はさながらタバスコのようで、容赦なく何本もの血管を炎症させて右腕をボロボロにした
 
頭を動かす首の力もなくなり、ベッドの上にあるナースコールのボタンを探すことも難しくなっていた
 
今の私の姿は静かにベッドに横たわっているだけにしか見えないだろう
 
急変しても誰にも気づかれずに静かに死んでいくのかな…
 
 
 
 
まだ死にたくない
 
 
 
 
そして目の見え方もおかしくなった 
 
いつも見えていた映像はパズルが崩れてばらばらになった
 
物が正常に見えない恐怖がもたらす心理的なダメージは大きかった
 
 
きわめつけに主治医が言った
 
「挿管するかもしれません」
 
まってまって
 
ソウカンってテレビドラマで医者がビックリマークつきで叫びながら口になんか突っ込むやつでしょ?!
 
もうかんべんしてよー
 
意識障害でモウロウとする頭のなかで叫んでいた
 
 

┃ギランバレー症候群の原因と私の精神状態

 
患者の30%は鶏肉のカンピロバクターが原因で発症するらしい
 
主治医は「焼き鳥屋の生焼けには気をつけている」と言った
 
その他の残り70%の原因は不明のようだ
 
ちなみに私は発症まえに鶏肉は食べていない
 
 
けれども私はこの病気になったことに違和感が全くなかった
 
なるべくしてなったとさえ思えた
 
なぜなら病気になる前の精神状態がこの病にぴったり当てはまっていたからだ
 
私は猛烈に自分を責めることを繰り返していた
 
 
 
 
完璧な家事の要求にこたえられない
 
いくら改善と努力をしてもきりがない
 
 
 
 
話し合いにならない
 
常に緊張をしていてリラックスできない
 
自由な外出ができない
 
趣味を持てない
 
 
それが私の家だった
 
つまり私にとって自分の家は牢屋だった
 
 
 
 
入院してから約2か月後、リハビリを終えて私は自宅に戻ることになった
 
<著者:ちー>