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育児と抑うつの狭間で - 暴言夫からの心無い言葉

育児と抑うつと暴言夫

<著者:ヤマノ イノ>


1.育児と抑うつの狭間で - 暴言夫からの心無い言葉

 

┃心を軽くする方法

 
はじめまして、ヤマノイノと申します。
 
猫の手も借りたい、育児まっ最中の一児の母ちゃんです。
 
このコラムでは、夫のモラハラ言動で抑うつ状態にまで陥った私が、そこから脱するまでの実体験を例にとりながら、心を軽くする方法をご紹介していきたいと思います。
 
ここで本題に入る前に、図々しくもひとつだけお願いがございます。
 
それはこのコラムを常に懐疑的な眼差しで見て欲しいというものです。
 
この心を軽くする方法はまだ私でしか試したことがありません。
 
つまり、実験結果のサンプルがひとつしかないので、精度が低く信頼性に乏しいということです。
 
ですので、「この方法は私に合うのかな?」と常に疑問を持ちながら、読み進めていただければ幸いです。
 
もしあなたが、私と同じ立場におられて苦しんでおられるのなら。
 
そして、夫や他人からの行動や言葉に傷つき、身も心もズタボロになっても、なお育児に家事にお仕事にと頑張り続けていらっしゃるのなら。
 
その完全に重量オーバーの心の荷物を減らして、心がちょうどいいバランスを保てるようになるお手伝いをさせていただければと思っております。
 
超がつくほど頑張り屋さんであるあなたのお力になることができたら、こんなにも名誉で嬉しいことはありません。
 
それでは早速、抑うつ状態に陥るまでの、私の事例をご紹介していければと思います。
 
 

┃幸せの終焉と新生活

 
「私たち夫婦は最高のパートナーだ!」
 
妻はそう思っていた。
 
そしてその意見については夫も同じ考えだろうと、妻は勝手に思い込んでいた。
 
その思い込みも手伝いこの後、彼からの度重なる残酷な言動の数々に精神を蝕まれることになろうとはこの時の妻には想像もつかないのである。
 
夫の転勤に伴い、生後間もないひとり息子を抱え、身内や友人はおろか知り合いさえいない、未開の地へとやってきた。
 
勿論不安な気持ちもあったが、それと同時に愛する家族と共に過ごせることへの感謝と幸せな気持ちも溢れていた。
 
そしてなによりも
 
「夫と一緒なら、どんな苦難でも乗り越えていける。」
 
と、そう信じて疑わなかった。
 
妻の彼に対する愛と信頼は結婚前から絶大で、揺るぎないものであった。
 
視野狭窄なほどに夫に惚れ込んでいたのだ。
 
我ながらおめでたい思考だったと思う。
 
 

┃暴言夫からの心無い(?)言葉

 
夫からの暴言と待ったなしの育児で、妻が抑うつ状態に陥るまでに時間はそう長くはかからなかった。
 
新しい土地での初めての育児は困難を極めた。
 
日中は新米の母親と、生まれたばかりの赤ちゃんのふたりきり。
 
赤ちゃんにまつわる事は全て初めての連続だった。
 
特に辛かったのは、一度泣き始めると抱っこしてもオムツを替えても何をしても何時間も泣き続けれられたことだ。
 
毎日身も心もヘトヘトになった。
 
「もう疲れた。逃げ出してしまいたい。」
 
夫の前で思わず、弱音と涙がこぼれ落ちた。
 
夫が慰めてくれることを期待していた。
 
他者に期待することがどんなに馬鹿げていることか、この時の私は知らなかったのである。
 
しかし夫が言ったのは、
 
「お母さんはいつも元気で明るくいなくてはいけないよ。だから泣いたら駄目だ。悲しんだりしている暇はないよ。だって俺達は親なんだから。」
 
ということだった。
 
夫は私を励まそうとしてくれているんだと妻は思った。
 
だけど、心にモヤモヤしたものがかかって取れない妻はこう返した。
 
「親になったら弱音さえ許されないというの?私の辛い気持ちは、なかったことにしなければならないの?」と。
 
「違うよ、それは君の勘違いだよ。悪く捉えないで。君はいつもネガティブに捉える癖があるね。それ、やめてくれない?もう母親なのに、強くならなきゃね。」
 
なぜか批難されているような気がして妻は益々苦しくなり、涙が止まらなくなった。
 
しかし、夫の言うことは正しい気もしていたし、自分が些細なことを気にしすぎるのだとも思った。
 
だから苦しくなり涙が止まらなくなるのは、不甲斐無い母親であり妻である自分の無責任さに対する怒りなのだと思い込み自らを責めた。
 
「そうだ。母親になったからには強くなければならないのに、なんて私は情けないのだろう。ごめんね、こんなお母さんでごめんね。こんな頼りない妻でごめんね。」
 
─何故、未熟な私が子供を産んでしまったのか。
 
─何故、私はこんなにも至らないなのか。
 
─私は生まれるべきではなかった。
 
元々自己肯定感が低く、存在価値を見出せずにいた妻は自殺未遂を繰り返した。
 
妻が悲しみを露わにする度、夫は冷たい言動や態度を投げかけた。
 
心療内科を受診し、抑うつ状態であると診断を受けてからも、夫からの暴言は止むどころか、益々エスカレートしていった。
 
 

┃モラル・ハラスメントを行う加害者と、夫の共通点

 
この時はまだ知らなかったのですが、夫の言動や行動にはモラル・ハラスメント(以下モラハラ)を行う加害者と多くの共通点がありました。
 
それは、モラハラの提唱者である、フランスの精神科医マリー=フランス・イルゴイエンヌ氏の著書『モラル・ハラスメント 人を傷つけずにはいられない』(紀伊國屋書店)を通して知りました。
 
著書の一部を掻い摘んで用いると、
 
『モラハラの加害者は初期段階では取るに足らない言動や態度で不安に陥れ、徐々に被害者を支配下においたあと、精神的な暴力をふるっていく』
 
とか、
 
『モラハラ加害者には良心の呵責が感じられない』
 
等です。
 
ここで思い出していただけますでしょうか?
 
私が抑うつ状態に陥る初期段階で言われた言葉を。
 
「お母さんは泣いたら駄目」のような、ポジティブ思考の人には叱咤激励にも思える、取るに足らない言葉でした。
 
ですが、私はこの言葉により自責の念に苛まれ、まんまと不安に陥っています。
 
更に抑うつ状態になってからは、実は、夫の攻撃がエスカレートしていきます。
 
抑うつ状態になったことが、夫にとっては『支配下においた』ことになったのではないかと推測しました。
 
さらに、夫は次のような暴言を口にするようになりました。
 
「女は大人しくしているべきじゃないか?」
 
「お前は育ちが悪い。周りにもロクな人間がいなかったのだろう。」
 
等などです。
 
普通の人間なら弱っている人間に対して、ここまで言わないかと思われます。(普通の人間に対しても、余程の憎しみが無い限り言えないことだと思われます)
 
良心がそれを咎めるからです。
 
しかし、夫はいとも簡単にこれらの暴言を口にしています。
 
これはモラハラ加害者の傾向である『良心の呵責が感じられない』に該当しているのではないかと考えました。
 
夫を見ていると、こういったモラハラ加害者との共通点が、他にも多く浮上してきました。
 
このことから私は「夫はモラハラかもしれない」と仮定して考えることにしたのです。
 
次回、『夫はモラハラかもしれない - 相談相手えらびは慎重に!』へ続きます。
 
<著者:ヤマノ イノ