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名医は、なかなかいない

うつ病の病院選び、医者選び

よい病院にかかりたい、名医にかかりたい、失敗したくない。そんな方のために、うつ病経験者が具体的に解りやすく、うつ病の病院選び、医者選びのポイントを解説。


2.名医は、なかなかいない

~名医は、なかなかいない~
 
うつ病にかかったかなと、
最初に思った時。
 
インターネットで調べるのは
もちろんのこと、
 
そのあと、まずは、
うつ病関連の本
手にしてみる人が、
とても多いのではないでしょうか。
 
うつ病について
書かれた本の中には、
 
お医者さんが、
書いたものが多くあります。
 
精神科医や心療内科医が、
自分の臨床経験をもとに、
 
うつ病治療のポイントや
実情を教えてくれています。
 
中には、
自分が治療して完治した割合は
90何パーセントだといった、
 
自信にあふれた数値を出している
著者(お医者さん)もいます。
 
また、
このようにして治療することで、
社会復帰することができたと、
 
実例をたくさん書いている
お医者さんもいます。
 
その中に登場する
お医者さんは、
 
患者さんの話をじっくりと聴き、
うつ病だとハッキリ診断する。
 
そして、
的確な薬を処方する。
 
苦しい心の内を話せば、
真摯に耳を傾けて、
考え方のアドバイスをする。
 
仕事をしているのであれば、
休養するよう明確に指示をして、
診断書を書いてくれる。
 
生活面にも気を配り、
睡眠や食事の指導もする。
 
必要であれば、
心理カウンセリングや、
福祉サービスなど、
 
他の機関への橋渡しもし、
さまざまな選択肢を示す。
 
そんなお医者さんの姿が
描かれています。
 
それらを読むと、
希望がわいてきますし、
自分も病院へ行ってみようと、
誰もが思います。
 
そして、
実際に精神科や、
心療内科をおとずれてみる。
 
ところが。
 
まったく違う現実が、
そこには待っている。
 
診察時間は3分程度。
 
症状を聴かれて、
処方箋をもらって、
ベルトコンベアに乗せられた
荷物のように病院の外へ送り出される。
 
睡眠時間や、
食事の回数すらも
たずねられない。
 
生活面の指導はゼロ。
 
悩みを口にすると、
そういうことは、
ここでは対応できないと
ハッキリ言われることも。
 
質問する気力もそがれ、
何の病気なのか、
どのくらいで治るのか、
まったく解らないまま家路につく。
 
現実には、
こんな経験をする方が、
とても多いのです。
 
そこで、
病院を変えてみる。
 
しかし、
どこも似たりよったり。
 
いったいどこに、
本の中にいたような
『名医』がいるのだろうと探し、
 
医者選び、病院選びの迷宮へ
入り込むことになってしまう…。
 
ここで、
うつ病患者の病院選び、
医者選びの大前提
お話しする必要があります。
 
それは、
名医はそう簡単にいない
ということです。
 
本を書いているようなお医者さん、
また本に登場するようなお医者さんは、
 
まさに『名医』であって、
そう簡単にはめぐり合えない。
 
あまりいないからこそ、
『名医』なのです。
 
みんなが同じ質であったら、
『名医』とは言われないですよね。
 
いくら事前に調べてみても、
今度こそはと思ってみても。
 
確率的に、
そう簡単には見つからないのです。


お医者さんも人間です。
 
決して手を抜いているわけではなく、
次から次へと患者さんがくれば、
次から次へと診療していくしかありません。
 
苦しみのあげく
わらにもすがる思いで、
助けを求めに来たうつ病患者さんと、
 
忙しいお医者さんとのあいだには、
大きな大きな心の段差があるのです。
 
また、
すごく熱心なお医者さんもいれば、
それほどでもない人もいる。
 
自分が同じような苦しみを
経験したお医者さんもいれば、
 
まったくもって心が強く、
うつ病の人の気持ちが
これっぽっちも解らない人もいる。
 
それはお医者さんに限らず、
どのお仕事でもそうなのだから、
仕方のないことではないでしょうか。
 
お医者さんによって、
仕事(診療)の質が、
まったく違うのです。
 
世の中に、
ごくわずかな、
優秀なサラリーマンと、
 
その他大勢の
平凡なビジネスマンがいるように、
 
ごくわずかな、
優秀な名医と、
 
その他大勢の、
平凡なお医者さんによって、
 
医療業界は成り立っているのです。
 
それが現実です。
 
でも、うつ病のときは
とにかくつらいので、
 
そのような現実が、
なかなか目に入ってきません。
 
本の中にいるような
お医者さんを、
平均レベルと思ってしまい、
 
出会う医師、出会う医師に、
 
「なんて、ひどい医者だ!」
 
と思ってしまう。
 
そして、延々とつづく、
病院選び、医者選びの旅へと
でかけてしまう。
 
いわゆる、
ドクターショッピングです。
 
しかし、
なかなか出会えないため、
 
どんどんと、
選ぶ基準が高くなっていき、
さらに出会いにくくなってしまう…。
 
最後には、
お医者さん全体への不信感となり、
医療業界全体への不信感とまでなってしまう。
 
これが、本当に、
よくあるパターンなのです。
 
だからまずは、
大前提である、
 
『名医は、なかなかいない』
 
という現実を、
ハッキリと受け入れておく
必要があります。
 
ただこれだけでは、
病院選び、医者選びを
する気もなくなってしまいますよね。
 
そこで次回から、
『名医』がなかなかいないなりに、
 
どのようなポイントで、
病院や、お医者さんを選べばいいのか。
 
どのように、病院や
お医者さんと接すれば、
 
貴重な診療時間や費用を
無駄にせずにすむのか。
 
そのポイントを、
具体的に紹介していきたいと思います。
 
 
<武田 涼 著>